論文紹介(5) 日本におけるHIV曝露前予防内服(PrEP)カスケードのプロファイリング:全国横断調査データを用いた潜在クラス分析
当研究班の調査結果が英文論文誌に掲載されました。
公開日:2025年8月14日
本ページでは、その日本語サマリーを紹介します。
原文(英語)は、こちらをご覧ください。
Profiling the HIV Pre-exposure Prophylaxis (PrEP) Cascade in Japan: A Latent Class Analysis of a Nationwide Cross-Sectional Study
日本におけるHIV曝露前予防内服(PrEP)カスケードのプロファイリング:全国横断調査データを用いた潜在クラス分析
三輪岳史、Carol Strong、Stephane Wen-Wei Ku、Chia-Wen Li、Poyao Huang、Huei-Jiuan Wu、山口正純、生島嗣
本研究は、HIV曝露前予防内服(PrEP)の普及促進に向けた課題を明らかにするため、日本におけるゲイ、バイセクシュアルおよびその他の男性と性交渉を行う男性(gbMSM)を対象にPrEPカスケードを構築し、カスケード各段階の移行に関連するサブグループの特性を検討することを目的とした。2021年2月から3月にかけて横断式オンライン調査を実施した。PrEPカスケードは、認知、使用意思、導入、服用レジメンの4段階で構成した。潜在クラス分析(LCA)により参加者のサブグループを同定し、ロジスティック回帰分析によりカスケードにおける最大の脱落段階との関連を検討した。HIV陰性/不明のシスジェンダーgbMSM 5,831名(年齢中央値:38歳)のうち、52.6%がPrEPを認知しており、そのうち76.4%が使用意思を示した。しかし、使用意思を有する者のうち実際にPrEPを導入していたのは20.5%にとどまり、これはカスケードにおける最大の減少であった。PrEPを導入していた者のうち、43.8%がデイリーで服用していた。潜在クラス分析の結果、以下の4つのサブグループが同定された:(i)Sexual Adventurers(32.1%):性的活動が活発でHIVコミュニティとの結びつきが強い群、(ii)Reserved Bystanders(26.7%):HIVコミュニティや性的健康サービスとの関与が低い群、(iii)Positive Allies(24.6%):HIVコミュニティとの結びつきが強く、性的健康に関する議論への抵抗が少ない群、(iv)Young Explorers(16.7%):若年で中程度の性的活動を有し、HIVコミュニティとの結びつきが限定的な群。Reserved Bystandersと比較して、Sexual Adventurers(オッズ比[OR]5.27、95%信頼区間[CI]3.91–7.10)およびPositive Allies(OR 1.60、95%CI 1.14–2.26)は、PrEP導入のオッズが有意に高かった。PrEPの受容性は高まりつつあるものの、導入には依然として障壁が存在する。特に、若年のgbMSMやHIVコミュニティネットワークおよび性的健康サービスへのアクセスが限定的な集団に対して、サブグループの特性に応じた介入が必要であることが示唆された。
本研究は、令和2~4年度厚生労働科学研究費補助金(エイズ対策政策研究事業)「HIV感染症の曝露前及び曝露後の予防投薬の提供体制の整備に資する研究班」の一環で実施した。