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論文紹介① 5-MeO-DIPT、亜硝酸エステル類等向精神薬の供給減少と薬物使用行動の変化ー全国HIV陽性者調査から

当研究班の調査結果が英文論文誌に掲載されました。本ページでは、その日本語サマリーを紹介します。
原文(英語)は、こちらをご覧ください。

 


 

5-MeO-DIPT、亜硝酸エステル類等向精神薬の供給減少と薬物使用行動の変化ー全国HIV陽性者調査から
林神奈, 若林チヒロ, 生島嗣, 樽井正義

背景: 2005年以来日本は、男性とセックスをする男性(MSM)の間で多く使用されている5-MeO-DIPT(5MO; フォクシー)および亜硝酸エステル類(AN; ラッシュ、ポッパー)を含む、さまざまな新しい向精神薬(NPS)を段階的に禁止してきた。2014年に全面的に禁止されて以降、これらの薬物は国内市場から姿を消したと報告された。5MO/AN/NPSの使用が、MSMを中心とする日本のHIV陽性男性の間で広まっていたことを踏まえて、本研究では、供給減少が生じた後の薬物使用行動の変化の特徴を明らかにする。

方法: 2013年と2019~20年に行われた2回の全国HIV陽性者調査(n=1042)のデータについて、多変量修正ポアソン回帰を用いて、5MO/AN/NPS不足への対応と、2019~20年と2013年の間の薬物使用行動の変化を、自己申告に基づいて明らかにした。

結果: 2019~20年に調査された391人の男性(96.7%がMSM)のうち、供給減少に際して234人(59.8%)が5MO/AN/NPSの使用を停止、52人(13.3%)が使用を継続、そして117人(29.9%)が代替薬物を使用したが、その多くは(60.7%)メタンフェタミンだった。代替薬物を使用した人は、無防備な性行動をしていると回答する傾向があり(調整相対リスク[ARR]=1.67; 95%信頼区間[CI]: 1.13-2.47)、また階層帰属意識を(中から高ではなく)低(ARR=2.35; 95%CI: 1.46-3.79)、中の下(ARR=1.55; 95%CI: 1.00-2.41)と答える傾向が見られた。過去1年間にメタンフェタミンを使用した(ARR=1.93; 95%CI: 1.11-3.35)、薬物使用をコントロールできないと感じた(ARR=1.62; 95%CI: 1.07-2.53)と答える割合は、2013年と比較して2019〜20年は有意に高かった。

結論: 供給減少に直面し、回答者の約5分の1が5MO/AN/NPSの代替としてメタンフェタミンを使用していた。メタンフェタミンの使用と薬物使用をコントロールできないという自己認識も、供給減少の後、集団レベルで増加している可能性がある。これらの知見は、強力な使用禁止策が、より危害の大きな薬物へ代替させる可能性を示唆している。この集団へのハームリダクション介入が求められる。

 

本調査は、平成30年~令和2年度厚生労働科学研究費補助金エイズ対策政策研究事業「地域においてMSMのHIV感染・薬物使用を予防する支援策の研究」(研究代表者: 樽井正義)の一環で実施しました。