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酒やクスリに溺れてる恋人や友人、手放せなかった 人間関係(共依存) ヒロシさん(20代後半 ゲイ)

なんとなく地元で就職して、そのまま結婚するだろうと考えていたヒロシさんは、それでも自分のセクシュアリティをごまかさずに生きていく道を選んだ。転機となったのは東京への転職。地元を送り出される時、「クスリだけはやらないように」と言われた意味を、いま身をもって体験している。薬物への誘惑が多い都会で、ヒロシさんは周囲の人とどう接しようとしているのか。

それでも「ふつう」に結婚するつもりだった

自分は同性の方が好きなのかなと思っても、高校生までは自分では認めたくなくて、女の子と付き合ってセックスしたこともありました。でも、「これじゃない感」が拭えなかった。その後、地元の大学に入学した年の6月に友だちから急にカミングアウトされました。「実はわたしゲイなんだよね」って。ゲイは変なことではないんだ、というのがそのときの感想でした。彼はゲイバーでバイトをやっていて、一人で営業しているときに初めて遊びに行きました。でも大学生の時は、経験としてはそこまでです。順調に就職も決まって、卒業したら結婚して家庭を築くんだろうなと、まだステレオタイプに考えていた。

それでも興味はあったから、社会人1年目のときに、ゲイフレンドリーだと聞いていたタイに行きました。日本だとどこかしらいい子ぶっている自分がいたけれど、タイでは飲み屋で出会ったタイプの人に誘われて家までついて行きました。それが男性との初体験です。こっちのほうがしっくりくると思った。

自分のセクシュアリティについて母親に話したのはその後です。23、4歳のとき、初めて付き合っている人ができました。こちらが実家暮らしだったこともあって、相手のところに遊びに行く時間が増えて。最近家にいないことが多いけどどうしたの、と母親に訊かれて、「実はお付き合いしている人がいまして」。それから、この件について何度も話し合いました。実家は田舎で、一人っ子だから、自分がいなくなると家を継ぐ人がいなくなる。親としては孫の顔が見たいと思うのは自然だから、自分はゲイなんだよという話を正直にして、お互いの思いを共有しました。

都会の社交場へ

地元ではよくゲイバーに飲みに行っていました。毎週土曜日は飲みに出て、オープンからラストまでいて。みんなとお酒を飲んで歌って、というのがストレス発散だったんです。

地元で付き合った2人目の彼氏は、20代の時東京で生活していて、2丁目のゲイバーで働いたりクラブで遊んだりしていた人でした。若い頃に薬物関係にハマっていたということも、本人が打ち明けてくれました。このときは、過去の体験として聞いただけです。

その人と付き合っていた当時は自分の仕事がきつくて体調を崩しがちで、両親にも無理してまで働いてほしくないと言われていましたが、自分の転職が決まり、そのすぐ後に彼氏が転勤することになったのもあって、彼と別れて東京で転職することにしました。

東京に来た後も、そこそこ飲みに出かけていました。上京して2、3カ月で飲み屋のスタッフさんとも仲良くなって。お店きっかけで恋人ができたこともあります。そのうち、飲み屋以外の夜遊びもしてみたいと思うようになり、クラブにも行き始めました。

すぐそこにある薬物

薬物を使っている人に出会うのは、ゲイアプリかクラブです。自分の場合、バーでは見かけたことはないですね。

アプリで会う人は、ごはんを食べるときには何も言ってきません。ヤろうかとなったときに、複数で行為している写真を送ってきたり、乱交、ナマ、キメセクといったキーワードで誘ってきたりしました。直接言う人もいれば、ぼかして言う人もいます。その時には必ず、「いや、ぼくはいいです」と伝える。

セックス相手が薬物を使っていたことはあります。エッチに至るまで何度かごはんを食べたりして遊んでいるので、いわゆるシラフのときとキマっている状態とで、様子が明らかに違うんです。実際使っているところも見たことがあります。MDMAでした。

体だけの割り切った関係ということもあって、違和感を感じつつもセックスはしました。「飲んだ方が気持ちよくなれるよ」とか、しつこく誘ってくる人もいますが、きっぱり断ります。そういうのはいいんだよね、と伝えると、ああそうなんだ、ってすっと引き下がります。運がいいだけかもしれませんが、知らぬ間に飲み物に混ぜられたり強要されたりといったことはありません。

「はまり込んで行く人」を見つめる

仲のいい友だちで薬物にハマっちゃっている人がいて、まさにいま悩んでいます。ある日突然「実は(クスリを)食べないとまともにヤれないんだよね」と打ち明けられた。複数でやっているときの写真や動画も見せられて、そこには注射器が転がっていたりしました。おそらく覚せい剤をやっていると思います。

最初聞いた時は「ふーん、そうなんだね」と流しちゃいましたが、最近は、一緒に使おうって誘ってくる。彼とは、エッチの関係、薬物の関係は嫌なのですが、明確に断ったら縁を切られるだけで済むのか……。いま忙しいから無理、とのらりくらりかわすのが精一杯です。

ほかの友だちに、最近こういう人がいて悩んでいると相談したことがあります。その友だちには、自分のことをもっと大事にしろ、早く縁を切りなと、すごい剣幕で言われました。その人と仲良くしているだけで自分も同じように薬物を使っているんじゃないかと、周りから思われるかもしれない。それに、一緒にいるときにその人が職質を受ける、あるいは逮捕なんてことになったら、自分にも被害がくる可能性はある。その友だちは、そういう風に言いました。でも、変に関係が深まっていることもあって、一緒に遊んだりするのは楽しいんです。だから縁を切りづらいという気持ちもあって。

彼は頻繁に誘ってきます。今夜は複数があるから、いまから(クスリを)食べなきゃ、とかメールしてくる。

東京に出て来たばかりの頃はこういうことがありませんでしたが、クラブに行き始めて、アプリでいろんな人に出会うようになって、本当にこんなに薬物が蔓延しているんだと驚いています。地元でよく行っていたバーのママは、若い時に東京にいたからか、お酒はまだいいけどクスリには本当に気をつけてね、と口すっぱく言っていました。なぜママがそんなに気にしていたのか、ここ最近身にしみて感じています。

【もしいま同じような境遇の人に相談されたら】

ごはんをする程度の友だちよりもっと身近な人、たとえば恋人が薬物に手を染めていたら、まずやめてほしいです。少なくとも、本人がやめられるよう、いろいろ手を尽くしてこちら側ができる努力はするでしょう。それでもやめさせられなかったら、別れるという選択をするかもしれない。大事なのは、相手に対してどういうことができるか、という情報を得られる場が、共有されていることだと思います。一人で悩まなくて済みますから。

病気に関することであれば、それなりにサポートが充実しています。でも、薬物に関しては社会の目や法的制裁もあって、支援するにしてもいろいろ難しい部分があります。友だちや恋人で薬物をやっている人がいたとしても、その人にどう声をかけてあげたらいいか、情報がなくて迷ってしまう。誰かに相談されても、どこを紹介すればいいか知らない人が多いはずです。

「Stay Healthy」のページは、メンタルのことも薬物のことも書かれていますよね。こういうページはいままでなかったのではないでしょうか。まずはここを見てみて、って言えるウェブサイトがあると安心ですよね。

 
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